こんにちは、すきマッチです。。
高齢者とかかわることを仕事にしている私たちは「転倒の知識とその予防についての知識」は必須といっても過言ではありません。
この記事を最後まで読んでいただくことにより、「高齢者の転倒」と「その予防体操」についての知識がつき、そして明日からの介助にも役立てることができます。
また知識が増えることで、ご利用者との信頼関係も一段と深まります。
日本は現在、高齢化率21%以上の「超高齢社会」です。
そして、2025年頃には団塊の世代が75歳を迎え、4~5人に1人が後期高齢者(75歳以上)の「超・超高齢社会」に突入すると考えられています。
介護保険費を抑えたい国の動向として、転倒予防への需要は拡大しています。
そしてこのコロナ禍による外出自粛。
普段、地域の集まりに行っていた高齢者や、毎朝集まって体操をしていた高齢者もほとんど見なくなりました。
そうなると高齢者はどんどん身体は衰え、転倒の可能性が高まります。
今の時代、転倒予防の知識は必ず必要で、知っているだけで高齢者へのかかわり方も変わります。
専門的な視点からではありますが、できるだけわかりやすく具体的に解説していきますので、気構えず楽しんで読んでみてくだい。
目次
転倒に関する知識
まずは転倒に関する知識からです。
高齢者は普段どんなところで転倒するかを知ることでリスク管理の知識もつきます。
転倒する場所
高齢者の転倒場所は「庭」が最も多く、次いで「居間・茶の間・リビング」「玄関・ホール・ポーチ」「階段」「寝室」ということがわかっています。
※内閣府(全国の60歳以上の男女の約2,000名の面接聴取)の報告
屋外での転倒が多いように思えますが、実は屋内での転倒が多いのがわかります。
また、屋内では「階段」や「お風呂」が滑りやすく、つまずきやすいため転倒も起こりやすいイメージですが、実は日常よく過ごしている「居間・茶の間・リビング」での転倒が多いことがわかります。
このことから転倒に注意している場所よりも、普段から無意識に生活している場所の方が足元に注意が払えず、つまずくことが多くなっているのではないかと考えられます。
つまり、高齢者の方に転倒予防として指導する場所は、屋内の中でも特に「居間・茶の間・リビング」で足元に注意する、とういことが重要となります。
転倒する原因
加齢とともにあらゆる機能が低下してきます。
・注意力
・視力
・平衡感覚
そして、筋力です。
注意力の低下とは、2つのことや3つのことを同時に行う能力が低下してしまうことです。
またそれだけではなく、ボーっとしてしまう時間も増えてしまいます。
ボーっと歩いてしまうことで、床下にあるコードや段差に注意がいかず転倒してしまうことはよくあります。
視力や平衡感覚の低下により、足元にあるものがわからずつまずいたり、急なふらつきや振り向いたときなどにふらついてしまい転倒してしまうことも多々あります。
筋力が低下してくると足が思ったほど上がっておらず、つま先が引っ掛かり転倒することもあります。
またバランスを崩した時に一歩が出ないか、もしくは一歩が出ても踏ん張る力がない、ということもあります。
「若い時ころだったらこれぐらいでこけなかった」ということはよく耳にしますが、実はその通りで多少バランスを崩しても私たちのような年齢で筋力が十分あるなら立ち直ることができますがあるなら、筋力が弱っている高齢者は転倒してしまいます。
転倒はこのようにして起こるわけですが、では転倒予防にはどうすればよいかと言いますと、
まずはできるだけ居室内に物を置かず、転倒リスクのあるものを排除したり、お声掛けをしたり、アドバイスをすることなど、環境を整えることはできるかもしれません。
そして加齢によって生じる視力低下・平衡感覚機能低下を食い止めるのは不可能ですが、
では、"筋力"はどうかと言いますと、これらは訓練によって鍛えることができます。
私たちはこれらに対してアプローチをしていきます。
転倒予防に必要な筋肉
実際に転倒予防に直接かかわる筋肉はこれらの5つです。
①大腿四頭筋 ②腸腰筋 ③中殿筋 ④前脛骨筋 ⑤下腿三頭筋
これらの筋肉を鍛える必要があります。
大腿四頭筋
太ももの前側にある太い筋群で、身体の中で最も大きく、立ち上がったり歩いたりする時に働く大切な筋です。
バランスを崩して踏ん張るときにも働きます。
もし筋力が低下していると踏ん張ることができず、そのまま崩れていきます。
腸腰筋
下腹部から大腿骨まで伸びている筋肉で股関節の前面にあります。
股関節を曲げるのに作用します。歩く時、足が床に引っかからないように、足全体を持ち上げるのに大事な筋です。
この筋肉が弱いとすり足歩行となり、つまずいて転倒してしまいます。
中殿筋
骨盤の横についている筋肉です。
骨盤を安定させる筋肉です。
歩行や立ち上がりの時に骨盤が左右にフラフラせず、安定させる役割をします。
バランスを崩し踏ん張るときなどにも役立ちます。
前脛骨筋
足の前面についている筋肉です。
つま先を上げるのに働く筋肉です。
つま先がひっかかることが一番転倒につながるため、非常に大切な筋肉です。
下腿三頭筋
足の後ろ側についている筋肉で、いわゆる"ふくらはぎ"です。
人は歩くとき、立っているときは必ずバランスを保っています。
この筋肉はバランスを保つのにもっとも活躍します。
それ以外にも、しっかり床を蹴りだすことにも作用し、歩幅を大きくする働きがあります。
転倒予防体操の種類
では転倒予防体操について説明していきます。
上記の筋肉をしっかり鍛えていくのはもちろんですが、それだけでは足りません。
転倒予防体操は大きく3つに分類することができます。
①柔軟体操
②筋トレ
③バランス練習
まずは柔軟体操です。
柔軟性を出すことで筋肉を良い状態にします。
カチカチの筋肉のまま筋トレをすると、筋力アップへの効率が悪く、かつさらに硬くなりケガの原因にもなります。
次に筋トレです。
上記であげた"転倒予防に必要な筋肉"を鍛えていきます。
最後にバランス練習をします。
あまりバランス練習を取り入れておられない方も見受けられますが、非常に大切です。
実際の生活場面でふらついたとき転倒するかしないかはバランス能力にかかっています。
筋トレにより"鍛えた筋肉"を"使える筋肉"にするためにも最後にバランス練習をすることが大切です。
「大腿四頭筋が強くなった!」「足がここまで開くようになった」と喜んでいても、いざふらついた時にバランスをとれず転倒してしまうと意味がなくなってしまいます。
ということでバランス練習も必須です。
転倒予防体操委にはこれら《柔軟性》《筋力》《バランス能力》はどれも重要で、一つも欠かすことができません。
転倒予防体操を紹介
転倒予防を完璧にするには多数の体操が必要ですが、
今回はその中で主に重要なものを取り上げてご紹介します。
ストレッチ
ストレッチにより柔軟性を出すべき筋肉はこの3つです。
①腸腰筋 ②ハムストリングス ③下腿三頭筋
腸腰筋のストレッチ
この姿勢により、右側の腸腰筋をストレッチします。
腰を反りすぎると腰痛の原因になるため、腰を反らないように意識しましょう。
こんな感じです。
もし伸長感が足りずもっと伸ばしたいときは、腰を反らずに右腕を上げます。
筋肉には膜がついていて(筋膜)、いろいろな筋肉と連動しているため、腕を上げるだけでも筋膜が引っ張られ伸長感が増します。
そして、その状態で左側に体を倒していくと更に伸長感が増します。
一度試してみてください。
ハムストリングスのストレッチ
椅子に座って行います。
膝はしっかり伸ばし、つま先も上げておきましょう。
ゆっくり体を前に倒していき、無理のない範囲で伸ばしていきます。
腰が曲がらないように意識しましょう。
腰が曲がると腰痛の原因になりますし、しっかりとハムストリングスをストレッチすることができません。
筋トレ
転倒予防に効果がある筋トレはこの5種類です。
①立ち上がり ②もも上げ ③足開き ④つま先上げ ⑤かかと上げ
立ち上がり
この運動は、大腿四頭筋を鍛える運動です。
しっかりと膝を曲げ、前傾姿勢をとります。
深く座りすぎると重心を前に移動させることが難しいので、できるだけ浅く座りましょう。
立ち上がるときは体重を前⇒上を意識します。
立ち上がるのが難しい、もしくはふらつく方は、何か支えを持ちながらでもOKです。
もも上げ
この運動は腸腰筋を鍛える運動です。
背中を曲げてすると足が良く上がりやすくなりますが、良い姿勢ではありません。
ケガの危険性も生じます。
正しい姿勢を意識で行いましょう。
ももの上がりづらさを感じるかもしれませんが、大きく上げなくても効果は期待できます。
足開き
この運動は中殿筋を鍛える運動です。
右足のつま先はまっすぐ前を向けます。
つま先が外側を向いてしまうと間違った筋トレになるので気を付けましょう。
つま先上げ
この運動は下腿三頭筋を鍛える運動です。
何かを支えにして行っていただいてもOKです。
上がりきったところで1秒程度維持します。
かかと上げ
この運動は前脛骨筋を鍛える運動です。
座って行うのも良いと思います。
ただし座ってする場合、あまり深く座りすぎるとつま先があがりにくいです。
バランス練習
最後にバランス練習をします。
バランス練習はこの2つです。
①片足立ち ②前後・左右へのステッピング
片足立ち
片足立ちにより、バランスを保とうといろいろな筋肉が協力しながら適切に働きく能力、いわゆる"筋の協調性"を鍛えることができます。
また骨密度UPにも役立つため、骨粗鬆症にも効果的な運動です。
始めは壁など支えを持ちながらやってみましょう。
徐々に負荷を調整し、手を指に変えたり、何も持たずにやったりと試してみるのも良いと思います。
前後・左右へのステッピング
ステッッピングは、人がバランスを崩した時に一歩足を踏み出しバランスを保つ役割があります。
棒かテープを準備して、それをまたぎます。
《前後ステッピング運動》
ラインをしっかりまたぎ切ります。
《左右ステッピング運動》
最初は何かをつかみながらしていただいても良いかと思います。
ラインの位置もあまり距離が遠すぎるとふらつきますので、無理のない範囲で行いましょう。
こんな体操もおススメ
①肩甲骨はがし ②骨盤運動 ③胸のストレッチ
これらの運動は猫背(円背)への予防体操になります。
年齢ともに背中が曲がってくる方は多いです。
原因としては、
・骨粗鬆症
・背筋の筋力低下
・家事による不良姿勢の継続
など考えられます。
猫背になると骨盤が後傾してしまいます。
骨盤が後傾すると歩幅が小さくなり、足の裏をペタペタとつきながら歩くような歩き方になってしまいます。
そうなるとつまづきやすくなり転倒の可能性が大きくなってします。
また、猫背の片が転倒すると"腰椎圧迫骨折"という腰の骨折の可能性が増してしまいます。
というわけでこの2つの運動も必要かと思いますのでご紹介します。
肩甲骨はがし
肘を大きな円を描くように回していきます。
この運動により肩甲骨が上下・左右・斜めと動きます。
肩甲骨が動くことで肩甲骨周りの筋肉が緩み
骨盤運動
この運動の効果は、
・骨盤の動きの改善
・座位でのバランス能力UP
・背筋・腹筋の筋力UP
です。
とっても効率よく猫背の予防・改善の効果が期待できます。
胸のストレッチ
特に女性の場合、日常生活で猫背になる場面が多いです。
例えば、洗い物、洗濯、料理、掃除などの場合、顔は下を向き背中を丸めてしまします。
そうなると胸の筋肉が縮こまり硬くなり、猫背から真っすぐに戻しずらくなってしまいます。
猫背解消には胸の筋肉を緩めることも重要になってきます。
写真のようなポーズをとります。
手の位置に注意してください。
高すぎず、低すぎず、一番胸の筋肉が伸びるポジションを探しながら行います。
もっと伸ばしたい方は、伸ばしている胸の筋肉の反対側に身体をひねります。
継続が必要
なんといっても継続が最も重要です。
1か月やろうと3か月やろうと、その後パタッと辞めてしまうと元に戻ってしまいます。
そう、継続しなければ意味がなくなってしまいます。
"継続が大事"というのは誰もがわかっていることだと思いますが、なかなか難しい。
継続するには定期的なモチベーションUPが必要です。
ではどうすればよいかというと、変化を客観的に数値で見ることだと私は思っています。
今回は一つの評価を紹介します。
【TUG(Time UP & GO Test;タイムアップアンドゴーテスト)】というものです。
これは下肢筋力、平行機能、転倒のリスクなどの日常生活機能を評価するテストそして最適です。
方法は、
椅子から立ち上がり
3ⅿ歩行し、
戻ってきて着座する。
この時間を測定します。
コストがかからないので手軽にできるテストです。
では具体的に説明します。
測定者はあなたで実施者がご利用者の場合、
1.ご利用者は椅子に座る。手は太ももの上におく
2.あなたはご利用者に対して「合図があったら、できる限り早く歩いて、3ⅿ先のコーンを回って戻ってきて、また椅子に座ってください。」「走らないでくださいね、早歩きでお願いします」「コーンを回り方は右回り、左回り、どちらでも結構ですが、滑りやすいので気を付けてください」と声を掛ける。
3.あなたは「用意、ハイ!」と掛け声をすると同時にストップウォッチを押す。
4.ご利用者は立ち上がって早足でコーンまで歩き、折り返した後椅子に座る。
5.この時あくまで早歩きで走ってはいけないことを確認
6.椅子に座ったところでストップウォッチを押す(小数点第3位を四捨五入)
7.2回測定をし、早い方の値を採用する
準備物は、
・ストップウォッチ
・椅子
・コーン(ペットボトル)
・3ⅿの巻き尺
です。
3か月ごとに測定してみましょう。
徐々に数値が変わってくることに喜びを感じられるはずです。
おわりに
運動は週に2回~3回程度が良いとされています。
運動する際の注意点は、
①環境が危険ではないか
②体調は良好か
③既往歴や服薬状況の確認
です。
運動にはリスクもありますので、十分注意しましょう。
いかがだったでしょうか。
今回お伝えした情報を、あなたの身近にいる方もしくはご利用者に是非お伝えください。
良い結果が得られることを願っています。
おまけに厚労省の介護予防マニュアルを載せておきますので、介護予防体操を事業所に導入予定の方はこちらも参考にしてみてください。
また介護予防には筋トレやストレッチ以外にもウォーキングが重要です。
ウォーキングについてもブログ記事を書いていますので興味のある方はこちらをご覧ください。
介護予防に効果絶大な"ウォーキング"【効果や方法を分かりやすく徹底解説】
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参考介護予防に効果絶大な"ウォーキング"【効果や方法を分かりやすく徹底解説】
こんちには、すきマッチです。 "ウォーキング"って「ただ歩くこと」や「散歩」とは異なり、"健康のため"という目的をもって歩くことをウォーキングといいます。 ご存じでしたか? ...
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それでは最後まで読んでいただきありがとうございました。
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