こんにちは、すきマッチです。
以下のような経験はありませんか?
「車いすのブレーキを忘れていて、危うくご利用者が転倒しそうになった」
「うっかりご利用者の薬を間違いそうになった」
「目を離した瞬間にご利用者が異食しそうになった」
どこの看護の現場や介護施設でも起こりそうなことですよね。
しかし、結果として事故には至らなかったものの、何度も同じようなことを続けていると実際に事故として発展してしまい、骨折や誤薬、誤飲といった、深刻な事態につながりかねません。
そこで、このような最悪な事態を未然に防ぐためにも、「ヒヤリハット」の考え方についてお伝えしたいと思います。
また、
「ヒヤリハットってよく聞くけれど、じつは意味がよく分からない……」
「ヒヤリハット報告書の作成を指示されたけど、何を書けばよいか分からない……」
という新人職員にどのように説明すればよいか、ヒヤリハットの基本や報告書の書き方、さらにはヒヤリハット報告を施設に定着させるためのポイントまで分かりやすく解説いたします。
委員会に選ばれて施設のリスクマネジメントを強化したい方や、ヒヤリハット報告を定着させて有効活用したい管理職の方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
ヒヤリハットとは?
ヒヤリハットとは、重大事故に危うく繋がるような、「ひやっ!」「はっ!」というような状況を指す言葉です。
ヒヤリハットは、事故や災害につながる要因を特定し対策する貴重な機会であり、
医療や看護・介護だけではなく、リスクマネジメントの観点から多くの企業で取り入れられています。
しかし、なぜヒヤリハットがリスクマネジメントにつながるのか、いまいちわかっていない方もいらっしゃるかもしれません。
ヒヤリハットの重要性は、「ハインリッヒの法則」を知ることで理解を深めることができます。
ハインリッヒの法則
ハインリッヒの法則は「1:29:300の法則」とも呼ばれ、米国の損害保険会社のハインリッヒが提案したためこの名前が付けられています。
現在、ハインリッヒの法則は世界中に広まっており、日本国内においても介護だけでなく、官公庁や企業、医療機関などさまざまな分野で活用されています。
その内容は、
「1件の重大事故の背後には29件の軽微な事故があり、さらにその背後には300件の異常が存在する」
というもので、この300件の異常が「ヒヤリハット」にあたるわけです。
つまりハインリッヒの法則からわかることは、ヒヤリハットは単なる「小さな異常」として終わらせるのではなく、その数が多くなれば重大事故につながるリスクが高くなることを示唆しています。
よって、ヒヤリハットの再発防止に努めることが、軽微な事故を減らし、ひいては重大事故を未然に防ぐために重要であることが分かります。
事故防止にはヒヤリハット報告が不可欠
重大事故を未然に防ぐためには、ヒヤリハットを収集・分析して、適切な対策を取る必要があります。
そして職員全体へ周知させます。
そのためにも欠かせないのが「ヒヤリハット報告」です。
報告ツールとして一般的に、「ヒヤリハット報告書」が用いられます。
ヒヤリハット報告書は、ヒヤリハットに遭遇した当事者が、その状況や原因、対策などを記載して共有するための文書です。
ここがよく間違われがちなんですが、ヒヤリハットを起こした人ではなく、遭遇した人(気づいた人・見た人)なんです。
例えば、Aさんが車いすのご利用者をベッドへ移乗しようとしていた際、車いすのブレーキを忘れていたとします。
それに気づいたBさんが慌てて駆け寄りブレーキをして、ふらついたご利用者を助けたとします。
この場合、ヒヤリハット報告書を記載するのはBさんになるのです。
なぜならAさんよりBさんの方が客観的に状況が把握できているためです。
ヒヤリハット報告書を活用することは、発生時の状況や原因を客観的に全職員へ伝えることが可能となります。
また、文書として残るため口頭での報告よりも共有しやすく、ヒヤリハットの再発および重大事故を防止するための分析も行いやすくなります。
ヒヤリハット報告書の基本項目
ヒヤリハット報告書のフォーマットは施設によってさまざまですが、必要事項が簡潔に伝わるシンプルなフォーマットが理想です。
ではヒヤリハット報告書の基本的な項目をご紹介します。
ヒヤリハット報告書の基本項目
基本情報:記入者の名前、所属部署、記入日等
ヒヤリハットの状況:発生日時や場所、経緯などの状況
想定される事故:どのような事故につながっていた可能性があるのか
発生要因:
- 環境原因
- ご利用者の原因
- 職員の原因
再発防止策・・・再発防止に向けた対策や計画など
ヒヤリハット報告書の書き方
ヒヤリハット報告書は5W1Hで情報を整理しましょう。
5W1H
- When:いつ(時間)
- Where:どこで(場所)
- Who::誰が(当事者)
- What::何をしたか(行動)
- Why::なぜ起きたのか(原因)
- How::どのように対応するか(対策)
5W1Hを使うことで、客観的な事実を具体的に他者へ伝えることができます。
間違ってはいけないのが、ヒヤリハット報告書は、責任追及のための反省文や始末書ではありません。
よって、「~だと思う」「~のせいで」などの私情や主観的な解釈は避けましょう。
発生時の状況について「見たまま」「聞いたまま」の事実のみを記載するようにします。
もちろん、発生時の状況を細かく正確に覚えていない時もあります。
その場合は、覚えている範囲で事実を正確に記入しましょう。
ヒヤリハット報告書の「発生要因」を分析して記載する場合、直接的な原因だけでなく間接的な原因についても考察し、報告書に記入しましょう。
「発生要因」は、
- 環境原因
- ご利用者の原因
- 職員の原因
の3つに分けて考えます。
例えば、
- 環境原因とは、ブレーキのききがあまい、床にコードが出しっぱなしなど
- ご利用者の原因とは、病識の欠如、認知症による失認、本人の不注意など
- 職員の原因とは、作業手順を間違えた、介助時の立ち位置が悪い、服薬管理が乱雑など
というふうに分析していきます。
直接的な原因には「車いすのブレーキの閉め忘れ」ですが、間接的な原因には「介助の指導不足」、「本人の気のゆるみ」、「忙しさ」などがあげられます。
次にヒヤリハット報告書には、再発防止のための対策・改善策も必要です。
ヒヤリハットの発生要因に対して、どのように対処するべきだったのか、今後必要な対策や改善策などを具体的に記入しましょう。
「車いすのブレーキの閉め忘れ」の対策には、「ブレーキよし!と毎回声を出す」、「定期的な介助研修の受講する」、「周りの職員も、移乗介助時には気に掛ける」などをあげます。
最後にヒヤリハット報告書には、起こりえた事故・災害についても記入するとよりベターです。
「大きな事故につながらなくて良かった」と安心するのではなく、起こりえた最悪のケースを想定することで、再発防止への意識を高めることができます。
ヒヤリハットが報告が定着しない主な理由
ヒヤリハットを収集・分析するには、ヒヤリハット報告を社内ルールとして定着させる必要があります。
しかし、以下のような理由から、ヒヤリハット報告がなかなか施設内に定着しない場合があります。
ヒヤリハット報告が定着しない理由
- 遭遇した当事者が「報告するまでもないことだ」と自分勝手に判断してしまう
- 報告することで叱られてしまうのではないかと不安を抱く
- 「そんなミスをしたのか?」と思われるのが恥ずかしい
- 報告書への記載が面倒だ
これらの問題を解消するには、まずは上司が率先してヒヤリハット報告をする必要があります。
上司が積極的にヒヤリハット報告を行うことで、職員は「自分より上の立場の人でもヒヤリハットに遭遇し報告をしている」ということを認識し、報告しやすい雰囲気を作ることができます。
またヒヤリハット報告すること自体に抵抗はなくても、報告書への記載が面倒で消極的になってしまう場合もあります。
そのようなケースを防ぐためにも、誰でも簡単に記載できる報告書フォーマットにすることが大切です。
- 記入項目を細分化する
- 記述式ではなく選択式にする
このように工夫をすることで、記入の手間を軽減することができます。
また、発生後は速やかに報告書を作成することも重要です。
ヒヤリハットが発生したときの詳しい状況は、時間が経つにつれて忘れてしまうものです。
記憶が正確なうちに報告書の記入を済ませるよう心掛けましょう。
すぐに報告書を作成できない場合には、簡単なメモを残しておくことをおすすめします。
事故防止委員会を設置する
ヒヤリハットや介護事故を全職員に周知徹底するための委員会を設置しましょう。
委員会には主に、起こった事故の報告書、ヒヤリ・ハット報告書を分析し、それを元に対策を話し合い、全職員へ通達するという役割があります。
他の職員が記載したヒヤリハットや事故に関する書類、分析結果などをあなたはしっかりと確認していますか?
自分が事故の当事者とならないようにするためには、自分の周りで起きていない事故にも目を向け、意識しておくことが重要です。
おわりに
いかがだったでしょうか。
今回は、ヒヤリハットの基礎知識や報告書の書き方、ヒヤリハット報告を社内に定着させるためのポイントなどをご紹介しました。
ヒヤリハットは業種業界を問わずあらゆる場面で起こり得るものであり、しっかりと収集・分析を行い再発防止に努めることが大切です。
では最後に宣伝させてください。
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