こんにちは、すきマッチです。
介護施設の必須研修の1つである【緊急時もしくは事故の対応に関する研修】を6回に分けて公開します。
「ご利用者が発熱したら?」「急に嘔吐したら?」など、ご利用者が体調を崩したときに、すぐに迅速な対応ができますか?
心身機能が低下した高齢者にとって冬場は、気温の低下や、空気の乾燥、そして感染症の流行などへの注意が必要な時季です。
12月、1月を前に、研修の機会を設けたり、シミュレーションをすることで、体調不良や急変へ対応できるようにしましょう。
今回は、Part②の【ご利用者に発熱があった時の対応】をお伝えしていきます。
目次
施設利用中に発熱があった場合
何はともあれ、まずは新型コロナウイルス感染症を疑い、電話相談をしましょう。
新型コロナウイルス感染症の可能性を考え、感染拡大防止の観点から迅速に対応しなければなりません。
ではご利用者が発熱した場合のフローチャートをお伝えします。
フローチャート
ご利用者にこんな症状が見られたら…
- 発熱(平熱より1°C以上高い)
- 強い倦怠感
- 息苦しさ、咳など呼吸器症状
- 風邪の症状(のどが痛いなど)
⇓
情報報告➡共有➡連絡
- ただちに施設管理者へ報告➡施設内で情報共有➡感染拡大防止策(下記記載)を開始
- かかりつけ医または各地の「受診・相談センター」に連絡し、指示に従う
- ご家族、ケアマネジャーへ連絡
⇓
感染拡大防止策を実施
- 各スタッフの役割を確認
発熱者への対応スタッフ、連絡スタッフ、消毒スタッフ、換気スタッフ、他のご利用者への説明スタッフ等
- スタッフの感染防護具着用や手指衛生を徹底
サージカルマスク、ガウン、使い捨て手袋、フェイスシールドなどの装着と手指衛生を徹底する
- 個室への移動と隔離
個室がない場合は、他との間隔を2m以上空ける、あるいはベッドの間をカーテンで仕切るなどで対応
- 室内を十分に換気する
- 対象のご利用者専用の体温計を用意
- ドアノブ、手すり、利用した共有スペースなどを徹底して消毒
⇓
ご利用者がご家族などと医療機関を受診
⇓
PCR検査が必要だった場合:
情報の整理と記録の準備
- 発熱5日前からの行動履歴
- 出勤職員名簿
- 席の配置
- その日ご利用だったご利用者の名簿
- ケア記録
- 施設の感染予防方法など
陽性の場合
- 情報提供や濃厚接触者等のPCR検査など、保健所からの指示に従う
- 都道府県・市町村に所定報告書に従って報告する
陰性の場合
- 発熱などの症状が治るまで利用中止
- 最低14日は「感染が疑われる」として対応する
PCR検査が不要だった場合:
インフルエンザの場合は発熱してから5日間、熱が下がってから3日間は利用中止
風邪などの場合は、症状が治まるまで利用中止
熱が下がってから24時間以上経過し、且つせきなどの症状が治るまでは利用中止
37.5℃なくても異変があれば注意
高齢者は体温の調節機能や免疫力が低下しています。
たとえ肺炎などを起こしていても熱が上がらない場合があります。
37.5°C以上を発熱といいますが、高齢者の場合は平常時の体温との差を考慮し、37.5°Cまで熱が上がらなくても、風邪のような症状が続いていたり、だるさ (倦怠感)などが見られるときは、フローチャートのような対応をしましょう。
新型コロナウイルス感染症の拡大が続いているいま、ご利用者に普段と異なる様子がないか、バイタルサインに異変はないかなど、細かい点に気を配ると同時に、感染予防対策を徹底しましょう。
感染予防対策の工夫
普段から感染予防の工夫に取り組んでいる必要があります。
工夫の仕方を数例ご紹介します。
送迎時の工夫
デイサービスであれば送迎前に電話連絡し、体温や体調を確認してから迎えに行きます。
さらに、送迎車に乗る前にスタッフが非接触型体温計で再度検温しましょう。
発熱や風邪などの症状がある場合は利用を控えていただき、担当ケアマネジャーに報告・相談の上、早期の受診や医療的判断を促します。
普段から発熱者専用の隔離スペースを確保
発熱などで感染症が疑われる場合に使用するスペースを確保しておきます。
体温計なども発熱者専用のものを準備しておきましょう。
感染予防対策チェックリストで自己点検
感染予防対策は全スタッフが一丸となって行う必要があります。
消毒が必要な機能訓練用のマシンがあるかないか、不特定多数が触るようなものがあるかないかなど、それぞれの事業所の実情に合ったチェックリストを作り、感染対策を自己点検しましょう。
チェックリスト項目
それではチェックリストの項目例をご紹介します。
参考しにていただき、施設独自のチェックリストを作成してみてください。
1、感染症対応力向上
- 手洗い/消毒
1ケア/1処置ごとに行っているか
- 定期的に換気をしているか
1~2 時間に1回5 〜1 0 分間
- スタッフの日々の健康管理を行っているか(出勤前の検温など)
- マスクは常に着用しており、鼻がマスクから出ていないか
- ゴーグルやメガネは着用しているか
- 防護具の着脱方法は全スタッフが周知しているか
- 手すり、ドアノブ、蛇口などを每日消毒しているか
- 清掃など環境整備を行っているか
2、物資の確保
- 在庫量と使用量、必要量を確認しているか
アルコール、サージカルマスク、ガウン、使い捨て手袋、フェイスシールドなど
3、関係者の連絡先の確認
- 発症後の連絡先を確認しているか
市町村、都道府県、ケアマネージャー、ご家族、かかりつけ医、保健所等
4、感染者発生時のシミュレーション
- 感染者が発生した場合のシミュレーションを行ったか
- スタッフが感染した場合などの人員確保の検討を行ったか
5、情報共有
- 感染者発生時の対応方針について、ご利用者・ご家族と共有しているか
- 感染者発生時の対応方針について、協力医療機関と共有しているか
発熱時のケアのポイント
ご利用者が発熱した際に気を付けるポイントをご家族に伝え、ご自宅でのケアに生かしていただきましょう。
熱の出始め
保温:熱が出始めるときには、悪寒や震えが起こるため、まずは全身を毛布などで覆って温める
環境:室温が20 °C前後になるように設定する。加湿器や濡れたタオルを干すなどして、湿度が下がり過ぎないようにする(40%以上)
安静:直射日光が当たらないように、やや薄暗くし、静かな環境にする。換気にも注意する
冷やす部位
- 後頭部
- ひたい
高熱の場合は
- 首の両側も冷やす
- 脇の下
- 太ももの付け根
水分と栄養
- 水分摂取:お茶やスポーツドリンク、果汁など十分に水分を取る
- 栄養摂取:消化や口当たりの良いものや、タンパク質、ビタミンの多いものを食べ、栄養不足にならないようにする
その他
- 清潔:体を蒸しタオルなどで拭き、汗をかいたらその都度着替える。汗などをそのままにしておくと、褥瘡ができる可能性があるので注意
- 服薬:自己判断で解熱剤を使わない。服薬は必ず医師の指示に従う
- 体温の記録:できるだけ同じ時間帯、同じ部位で測定し、記録を付けておく
おわりに
いかがだったでしょうか。
毎年の研修は準備する方も受講する方も大変ですが、意味があります。
1、研修を通して「ご利用者はどのような事故または緊急事態が起こるのか」を見定め、「どう対応するのか」を前もって周知しておくことにより、事故の未然防止、事故緊急時の適切な対応につながる。
2、ご利用者の顔色、表情、様子の変化を敏感に読み取れる《発見する力》を養い、早期発見・早期対応ができる。
3、自身の責任で事故などが生じた際、動揺せず「この場合の自分の役割は?」と問いかけるだけで周りを見られるようになる。
研修をする際は「なぜこの研修を毎年するのか」を始めにおさえておくことをお勧めします。
最後に宣伝させてください。
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